全国菓子研究団体連合会主催第8回技術コンテストグランプリ獲得作品が紹介されました(平成29年9月25日付 東京新聞朝刊)

<ひと物語>「渡良瀬」を和菓子に 全国技術コンで県内初グランプリ・関根雅史さん

風になびくカワラナデシコ、岩にたたずむ一翼のカワセミ…。夏の情景を表現した工芸菓子の作品「滴翠(てきすい)」。加須市柳生の和菓子店「御菓子司せきね」の店内に飾られており、来客に涼を運ぶ。
創作したのは店の和菓子職人、関根雅史さん(31)。全国の和菓子職人が参加した「第8回全国菓子研究団体連合会技術コンテスト」の工芸菓子部門で、色彩の鮮やかさや細部に至る表現力が評価され、県内初のグランプリに輝いた。「全国規模のコンテストで賞を頂いたことは光栄、うれしいです」と語る。
三人兄弟の次男。小学校時代は図工が得意で「手先を動かすことが好きだった」。大学在学中、祖父の代から続く店を継ぐ決意をした。
二〇〇九年、大学卒業後に東京都内の製菓専門学校に通った。そこで出合ったのが工芸菓子だ。菓子の材料を使って花鳥風月を表現する細工物で、その精巧な作りに衝撃を受けた。
一四年から家業に従事し仕事の後に工芸菓子作りに励んだ。この年、他の職人の技術に触れ、視野を広げようと、全国菓子研究団体連合会が主催する技術コンテストに初めて挑戦した。
お盆の上に情景を表現する「盆景菓子」部門に出品し、結果は初挑戦にもかかわらず、準グランプリだった。「色も含めて人の目を引く力がなかった。うれしい半面、次こそは『グランプリを』と思った」
以後、切磋琢磨(せっさたくま)して迎えた今回のコンテスト。大津市で七月に開催され、和菓子職人百六十人が「日本の四季の移ろい」をテーマに技術を競った。
グランプリ受賞作の滴翠は構想一カ月、制作に一カ月ほどかけた。素材は主に白あんや砂糖、米粉、食紅を使用。色合いは前回の反省点を踏まえ、実際のカワセミやナデシコのくすんだ色を「見て楽しめるように」と鮮やかな色にした。
イメージした情景は近所にある渡良瀬川や渡良瀬遊水地だ。これらの水辺の風景は幼少期から慣れ親しんでおり、「自分しかできない表現」で今回の作品を作り上げた。
和菓子の個人店の経営環境は、大手のスーパーやコンビニ店に押され、全国的に厳しいという。そんな中、地域に根差した店、地域の特徴を生かした商品を目指す。
「特産コシヒカリの米粉など地元の食材を使っている。(グランプリ受賞は)地元に技術を持ったお菓子屋さんがあることを知ってもらういい機会になった。個人店にしか出せないお菓子を出していきたい」 (中西公一)
<せきね・まさし> 加須市出身。県立不動岡高校、高崎経済大(群馬県)卒業。東京製菓学校(東京都)に通った後、茨城県内の和菓子店で修業。今年7月3日にあった全国菓子研究団体連合会技術コンテストの工芸菓子部門で最高賞のグランプリを受賞。問い合わせは「御菓子司せきね」(火曜定休)=電0280(62)0002=へ。

(平成29年9月25日付 東京新聞朝刊)

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